看護体験のご紹介 −K氏とのかかわりで学んだこと−

                         2病棟 酒井 美和                              
K氏(70代女性)は道東の自然豊かな町で暮らしていましたが、H24年3月食道がん疑いで地元の病院から当院に紹介され2病棟に入院して根治術を行いました。
術前は食事を全量摂取し、明るくおおらかで笑顔の素敵な女性でした。


しかし、術後の合併症等で治療が重なり、入院期間も半年以上に及び長期間の絶食状態となった為か、体調が回復し食事が始まっても「食べたい」という意欲が戻らず、表情も暗くなり、笑うこともなくなってしまいました。


そこで栄養士が介入し、嗜好に合わせて特別メニューを提供したり、飲み込みやすいようにと納豆やとろろをつけて工夫し、担当医もブジー等の処置や、食欲が出るようにと薬の調整をしましたが、好みの偏りが激しく食事摂取の指導は困難を極めました。


受け持ち看護師だった私は、どうしたら本来のK氏らしさを取り戻し、元気に退院できるのだろうかと日々考えていました。 


ある朝、出勤前にたまたま立ち寄ったコンビニでK氏が暮らしていた町の特産品が入っている「おにぎり」を売っているのを見て1つ購入し、のどに詰まらないよう海苔を取ってK氏に渡したところ、大変喜んでひとつ全部食べることができ「早く家に帰りたいわー」と久しぶりにあの笑顔を見ることができました。


その事がきっかけとなったのか その後 徐々に食欲も出てきて、みるみる元気になり、経腸栄養のチューブも抜いて、家族の待つ自宅へ帰ることができたのです。


今回、1つのきっかけで、経口摂取への意欲向上が患者の治癒力につながることを学びました。もちろんこのことだけではなく、医師、栄養士、スタッフ全員が親身になって関わったことで、成果が得られたのだと思います。

これからも、生活者としての患者さんに関心を寄せ 関わることで、個別性を大切に看護していけたらいいなと思いました。